16 January, 2013

NYC, Dec 2001 - ニューヨーク


Once there had been the World Trade Center in New York City. The first holiday season after 9.11.

Using Contax S2 single-lens reflex camera with Carl Zeiss/Contax Planar 50mm/F1.4 single focal lens.
All photo copyright © 2001 Megumi Manzaki.

2001年、アメリカ同時多発テロ後最初のクリスマスに、ニューヨークに行った。プレゼントやご馳走の買い出し客で、おもちゃ屋やグルメ食品店はどこも大混雑だった。クリスマス・ミュージカルや大評判のファンタジー映画を見るために、子供連れの家族が深夜まで出歩く街は活気にあふれていた。景気が悪い悪いと報じられていたが、大量消費国家の基礎体力みたいなのを感じ、圧倒された。

St. Patrick's Cathedral, NYC, Dec 2001
St. Patrick's Cathedral, NYC, December 24th, 2001.


五番街を下った所のエンパイア・ステート・ビルディング。その定礎着工は1930年3月17日のセント・パトリックス・デイだったそうだ。展望階のテラスでは、ほぼ整然と並んだクリスマス・イルミネーションのような360度の夜景にひたれるが、ダウンタウンの方角に、白色灯のサーチライトに粉塵が舞い上がる不調和な場所が見えた。かつては高層展望サイトとしてエンパイア・ステート・ビルの強力な商売仇でもあったワールド・トレード・センター(WTC)が、その場所にそびえていたはずなのだ。


WTC after 9.11. NYC, Dec 2001. 1


単に休日だからか、それとも目的地を失ったからなのか、通る車がほどんどないチャーチ・ストリートを徒歩で下ってゆくと、ビルの谷間で唐突に通りが途切れ、人垣ができていた。通行止めフェンスの向こうがWTCの跡らしい。人垣に近寄っても人声はあまりせず、ショベルカーのエンジン音や鉄骨の軋む音、コンクリートを砕くドリルの音、粉塵やくすぶる残り火をしずめるために撒かれる放水の音がするだけで、まるで現実の世界ではないみたいだ。アメリカ人家族の見物人がぞくぞく集まってくるが、クリスマスの晴れやかな笑顔はほとんどない。休暇返上で復旧作業や遺体捜索を続ける現場をまの当たりにしたら、犯人やその動機、戦争や世界の構造的矛盾に思いをめぐらすこともできず、ただ呆然と立ち尽くすしかない。


WTC after 9.11. NYC, Dec 2001. 2


WTC after 9.11. NYC, Dec 2001. 3
St. Paul's Chapel, December 25th, 2001.


最も近いキリスト教会セント・ポール・チャペルの、現場が直接は見えないブロードウェイ側の門扉が、祈りや願い、激励や愛国心鼓舞の「巡礼地」になっていた。アメリカ全土、世界各国から持ち寄られた手書きのアピールの中に、心から平和を願う言葉は、果たしてあったのかどうか…?


WTC after 9.11. NYC, Dec 2001. 4


WTC after 9.11. NYC, Dec 2001. 5


WTC跡付近には見物人を当て込んで、星条旗や、9.11当時英雄的な活躍をしたNYPD(ニューヨーク市警察)、FDNY(ニューヨーク市消防署)のロゴ入りのTシャツや野球帽を売る露店商が幾人も出ていた。