Using Carl Zeiss/Cosina Biogon 35mm/F2 ZM single focal lens with Sony Alpha ILCE-7S 35mm full-frame camera, Carl Zeiss/Contax Vario-Sonnar 80-200mm/F4 zoom lens with Sony Alpha ILCE-7M2 35mm full-frame camera, and iPhone 6 camera. Development using Adobe Lightroom 6.
All photo copyright © 2016 Megumi Manzaki (and © 2016 Eiichi Manzaki).
Marrakech (Marrakesh), 07-11 August 2016
滞在中の最高気温45℃、マラケシュ
イスラム教圏の国を訪れたのは初めてで、「欧化された私たちとは思考回路が違い、特に商人は抜け目なくて手ごわいんじゃないか」と、じつは行くまでは相当身構えていたのだが、行ってみたら何のことはない、モロッコ人は思ったよりのんびりしていて、穏やかで親切で、もてなし好きだった。値段交渉でも、予想したより高くふっかけてこないから拍子抜けしたぐらいだ。そのかわり人的サービスに対するチップは気前よくはずんんで、双方ハッピーな気分で別れるように心掛けた。
モロッコ人の人の好さは・・・・・・たとえばこんなことがあった。私たちはモロッコ到着初日から4晩、マラケシュ旧市街中心部フナ広場に面した Hotel & Ryad Art Place Marrakech という屋上プール付きで最高に居心地良い宿に連泊したのだが、ある朝、朝食のセルフサービスのミルクピッチャーが空だったのでギャルソン(ボーイ)に英語で言ったら、「ちょっと待ってて」とフランス語で返事して出て行った。2階バルコニーのテーブルに着いてオレンジジュースを飲みながら、広場の方をぼんやり眺めていたら、先のギャルソンが足早に広場を横切って行くのが見えた。「申し訳ありませんが、牛乳は切らしてます」とは言わずに、外の店へ買いに行ったのだ。しばらく待っていたら牛乳パックらしきもの2個抱えて戻って来るのが見えたが、途中で知人と出会って立ち話を始め、2~3分たっぷり油を売ってからホテルに戻って、にこやかに私たちのテーブルに牛乳を運んできた。・・・・・・連泊したからすっかり顔馴染みになったということもあるが、笑顔で骨身を惜しまないのだ。そして、顔見知りと出会う度にハグして大げさに再会を喜び合い、何よりも優先でまずは長々と世間話・・・。今日逢えたのは幸運、次はいつ逢えるかわからない、という砂漠の民の習性なのかもしれないと思った。
95 photos taken by Megumi in Marrakesh available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/albums/72157671537266750
Essaouira (and Diabat), 09 August 2016
エッサウィラ(とディアバット)
大西洋に面した古い港町エッサウィラから2キロほど離れた小村ディアバット、現・ジミヘン・カフェ。(外国人によって最初に作られたジミヘン・カフェとはその後経営者が代わったと思われる。)
ジミ・ヘンドリックスはエッサウィラが気に入って「街ごと買いたい」と言ったとか言わなかったとか、ここディアバットあたりの海岸でインスピレーションを得て『砂のお城 Castles Made Of Sand』を作ったとか、いろいろと伝説が残っているようだ。だが、モロッコ人が「ヒッピー・コミューンだ」と眉をひそめるこの場所は夏草が生い茂るばかりで、大西洋は眺められない。
大航海時代を想像させる美しい景観で世界遺産の街エッサウィラだが、1960年代末にジミ・ヘンドリックスが、1970年代にはボブ・マーリーが来たこともまた観光資源になっている様子で、そのポスターや写真で飾りつけたミュージックショップが何軒かある。西アフリカ起源のトランス系民族音楽グナウァのフェスティバルが毎年開催される土地だけに、長期滞在のミュージシャンやアーティストも多い街のようだが、ジミヘン風のミリタリージャケットやラスタヘアの若者が歩いているのをちらほら見かける。その1軒、BOB MUSIC にて。
ジミ・ヘンドリックス、ブライアン・ジョーンズ、ボブ・マーリーらがエッサウィラを訪れたのは、目当てはグナウァやインスピレーションばかりでなく、当時「最高品質」と言われていたある物のためだったかもしれない。現代では当然、それをお土産に買って帰ることは違法だ。今この地は、「美容と健康に効果あり」とハリウッドセレブが言いひろめたアルガンオイル――オリーブに似た実をつけるアルガンの木の世界唯一の自生地として名高い。マラケシュからエッサウィラへのハイウェイ沿道では、ビタミンEとオレイン酸に富む高栄養のアルガンの実を食べるために山羊も必死で木にのぼる、という珍光景を演出する牧童たちが、カメラを手に車から出てくる観光客からチップを徴収している。
74 photos taken by Megumi in Essaouira and Diabat available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/albums/72157669616125113
Beyond the Atlas to the Sahara..., 11-14 August 2016
アトラスを越えて、サハラ砂漠へ
Highway vendor of minerals and fossils ammonite and trilobite.
アトラス山脈から南に行くと、アンモナイトや三葉虫の化石を売る店がたくさん出てくる。
画面右端の大きなカスバは、『アラビアのロレンス』(1962年)の撮影用に建てた比較的新しい建物だそうだ。
この古いカスバ群アイト・ベン・ハッドゥが、『グラディエーター』、『アレキサンダー』、『キングダム・オブ・ヘブン』のロケに使われた地だと聞けば、それらを映画館の大スクリーンで観て古代中世のイメージを膨らませた私たちには、やはり特別の場所だ。
Cave dwelling nomadic family treated us with a cup of tea. Barrens at the southern foot of the Haut Atlas.
アトラス山脈南麓に広がる荒地に住む、ノマド(遊牧民)の家族。
驚いたことに、正真正銘の洞穴住まいだ。山羊を連れ草の生えている所を求めて男たちは留守。女と子供だけが残っていて、私たちを連れて来たベルベル人のドライバーとアラビア語でもなさそうな言葉で世間話を始めた。私たちを洞穴の中に招き入れ、湯を沸かしてお茶を入れてふるまってくれた。「観光客を連れて行くから、暮らしぶりを見せて写真撮影に応じ、お茶をふるまう」というのは彼らと地元旅行社との間の取引で、旅行社から金銭の報酬と茶葉の支給もあった上でのことだろう。だが周囲は何十キロにもわたって乾燥した荒岩地。古いペットボトルのこの水はどこまで汲みに行ったのだろう。それを思うだけで感慨を覚える。日本から持参した洋菓子(原材料に豚脂とアルコールを含まないことを確認して買った)を切り分けて皆で食べてもらった。
モロッコ女性の識字率は70%以上と、イスラム諸国の中では高い方だが、地域格差が大きいことは明白だ。この子が教育を受ける機会はいつか訪れるのだろうか?
日本の沿岸地方で防潮堤を築いたり波消しブロックを置いて海水の浸食から海岸線を守るように、砂漠に面した国では石を積んだり草木で柵を何重にも巡らせたりして、国土が砂に埋もれるのを防ぎ続けなければならないということを、来てみて初めて知った。
『シェルタリング・スカイ』のような、砂漠の絶望感、というものは得られない。
そりゃ無理だ、我々は「トラベラーではなくツーリスト」だから。
Photo (C) Eiichi Manzaki, using Leica.
196 photos taken by Megumi in this tour available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/albums/72157672638778466
Fes (Fez), 14-17 August 2016
フェズ
昔からフランス人観光客に慣れていると見え、メディナの狭い路地を行き来する荷車やロバ引きは、最初からフランス語で「アタンシオン!」と叫びながら通る。フランスやトルコで起きたイスラム過激派・IS関連テロの影響はあると聞いたが、それでも老若男女の大勢のフランス人が、安心のフランス語ガイド付きツアーで、世界遺産の古都フェズの迷宮散策を楽しんでいた。
メディナの喧噪のさなかにあっても、リヤドの中は外界と隔絶された別世界。
モロッコの人々は友好的で客をもてなすことが上手だった、と書いてきたが、それは裕福な外国人観光客の目に映る彼らのほんの一面かもしれない、ということはわかっているつもりだ。
メディナの路地にしゃがみ込む物乞いの老婆に、通りすがりの人々が小銭を手渡す姿をよく見かけた。「寡婦や孤児には善くしなければならない」というイスラムの教えに由来する、身についた自然な行為なのだろうと思う。だが一方で、新市街では交差点で信号待ちする車に近づいて金をせびるアフリカ人が頻繁に現れ、モロッコ人のドライバーは冷淡に無視する。「アフリカ人(特にナイジェリアやマリなど部族紛争や過激勢力からの脱出者)、それにシリア難民が増えて困っている」と、おとなしそうだった私たちのベルベル人のドライバーも吐き捨てるように言った。紛争や殺戮から命からがら逃れて来た人々だと知りながら、厄介者扱いしているのだ。
国内的にも地域格差は大きく、紀元7世紀にイスラム教とともに到来して支配階級に収まったアラブ人と、全人口の40%とも60%とも言われる先住民族ベルベル人との間に横たわる根深い問題。立憲君主制を標榜する御意見無用の王政。リビアを拠点にマグレブ諸国への勢力伸張を目論むISの影・・・。
世界のどこでも国家は矛盾をかかえている。
73 photos taken by Megumi in Fes available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/albums/72157671765223102
Casablanca, 17 August 2016 - the end of the travel.
カサブランカ - 旅の終わり
11 photos taken by Megumi in Casablanca available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/albums/72157671798289091