60歳過ぎてもライブハウス通いが止まらない、かっこいいインディー・ミュージシャンのライブ写真撮影に精出すおばさんロック・フォトグラファー。機材は1970~80年代のオールドレンズ、コンタックス/カール・ツァイス。時にはライカ。最近ニコンも使うけど、AFもAEも最新機能は信用せず、マニュアルモード一本やり。老眼かすみ目つらくても、今夜も腕っぷしでがんばるよ!
02 January, 2016
Varanasi, Dec 2015 - ヴァラナシ(インド)
After 30 years absence, revisiting Varanasi (Benares), the oldest holy city in India situated on the banks of the Ganga (the Ganges River). The city is also the birthplace of a sitar master Ravi Shankar.
ガンジス河の此岸に、紀元前6世紀にはすでにカーシーと呼ばれる街があったという。ヒンドゥー教の聖地ヴァラナシ。
私たちが結婚して1~2年めの頃、ふたりともまだ20代の若僧だった夏休みの初めてのインド旅行。この街の迷路と混沌と強烈な糞尿臭に恐れをなし、寄ってくる人間が皆カネの亡者に見えて抗い続け(押し売りガイドと英語で大ゲンカもした)、眩暈しながら必死で駆け抜けて終わった魔境。30年以上経って、自分たちの日常とは違う世界を見る経験を積み、歳とったなりに心のポケットがひろがった時、もう一度行ってみたいと思ったのがヴァラナシだった。
河岸に建つ藩主か大富豪の旧別荘風の小規模ホテルに5泊した。中庭と屋上がある開放的な造りで、私たちはよく部屋を出て、朝は蒼く霞む河向こうを眺め、夕は月影を映す黒い河面を眺めた。(時々停電で真っ暗になった。)真夜中に下のガートを覗き込むと、大きな荷物を頭に載せた巡礼者たちが互いに喋りながらゆっくりと、またある人々は黙って足早に、ガンガーの流れに沿って往来していた。
ヴァラナシ(英国統治下の旧名ベナレス)はまた、あのシタール奏者ラヴィ・シャンカール生誕の地とも伝わる。
Using Carl Zeiss/Contax Distagon 25mm/F2.8 single focal lens, Planar 50mm/F1.4 single focal lens, Vario-Sonnar 80-200mm/F4 zoom lens with Sony Alpha ILCE-7 35mm full-frame camera and ILCE-7M2 35mm full-frame camera, Leica X-2 APS-C compact camera, and iPhone 6 camera.
All photo copyright © 2015 Megumi Manzaki.
Narrow path through Manikarnika Ghat, a.k.a. Burning Ghat, an open-air cremation place.
有名なマニカルニカ・ガートの火葬場。大量の薪が積み上げられ、代々同じ職業に就く大勢の男たちが働く。人間はガンガーのそばで死ねば輪廻から解脱できる、と信じている。金銀と鮮やかな色の布にくるまれた死体が神輿のように男たちに担がれ、狭い路地を通って次から次へと運び込まれてくる。「ここは外国人立入禁止だ。金を出せば特別な見学許可が取れる。」とインチキ情報で言い寄ってくる男もいるが、私たちの宿はこの河下だったので、ここを通らずにはどこへも行けない。白煙と薪の爆ぜる音、熱い炎と舞い上がる灰にむせながら、煤で黒ずんだ男たちと、男たちが乗ってきた大型オートバイと、供物として撒かれる米に惹かれて寄ってくる牛を掻き分けて、ぬかるんだガートを毎日何度も通り抜けた。
Manikarnika Ghat view from the Ganga boat.
マニカルニカ・ガートでは、死者に敬意を払って「写真を撮ってはいけない」と言われていたはずだが、遊覧ボートに乗ったら「ノープロブレム、撮りな撮りな。」と促された(けど、そういう時に限って焦ってピントが甘くなった)。
Manikarnika Ghat view from the Ganga boat.
夫の火葬と同時にその妻を生きながら炎に投じるサティー(寡婦殉死)が、ヒンドゥー教徒の間では慣習として(教典には根拠が見当たらないにかかわらず)、20世紀に入り近代法で禁止された後もしぶとく続いたという。今はこの河岸のどこかに、死を待つ人の家とともに、寡婦の家があるのだそうだ。ここで多い日には100体もの火葬、つまり葬式が行われるが、女性が参列する姿はまったく見なかった。
A rich house of the boss of Manikarnika Ghat.
「マニカルニカ・ガートを取り仕切る親分は、不可触民だけど大金持ちで、この立派な家に住んでいる。」とボートマンから聞いた時、『カムイ伝』にも登場した「弾左衛門屋敷」を思い出した。
若い女性の沐浴シーンにしつこく迫る西洋人フォトグラファー。
Corpse of a baby drifting on the Ganga.
サドゥー(修行者)、コブラに噛まれて死んだ者、5歳以下の子供および赤ん坊を身ごもった女の死体は、現世の穢れから免れているゆえ、火葬せずに足に重石を付けてガンガーに沈める。たまに重石がはずれ、このように水面に浮かんで流れるのだという。
Washmen.
赤ん坊の死体がぷかぷか浮かぶすぐそばで、洗濯もする。
こういう落書きはたぶん外国人の仕業だと思う。
Harishchandra Ghat, another crematorium along the Ganga.
ヴァラナシのもうひとつの火葬場、河上のハリシュチャンドラ・ガート。マニカルニカ・ガートで高価な薪代を払えない人々がこちらに来るらしい。
Kites flying over the river.
河の上に点々と見えるのは凧。なぜか凧揚げが流行中。
Dashashwamedh Ghat, main ghat along the Ganga.
メインガートとも呼ばれるダシャシュワメード・ガート。明け方に沐浴する人で大混雑だったのは昔の話、今は遊覧ボートがひしめく船着場になり、沐浴は少なくなってしまったようだ。ここで毎日没後に、ヒンドゥー教徒にとって大切なアルティという火の儀式が行われる。
Aarti Puja, a ritual of fire at Dashashwamedh Ghat.
ダシャシュワメード・ガートで、毎日没後ガンガーに向かい捧げられるヒンドゥー教の火の儀式、アルティ・プージャー。日没の1時間以上前に行って、インド人のおばちゃん達と押し合いへし合いしながら、最前列に陣取った。儀式が始まる前のステージに燈明を点すのも、約50分間の儀式中ずっと鐘を鳴らし続けるのも、信心深い一般女性の役目らしい。
祈りの歌に人々が唱和して、アルティは終わる。
Indian Experience. (iphone selfie)
インドでもジミヘン。(わざわざ自撮り棒を持っていったのだが、撮る時はアイフォーンを手元から1メートル離すわけで、インドでそれやるのはちょっと恐ろしくて、初日の1回しか使わなかった。)
こんな所でアベちゃんの顔なんか見たくなかったんだが。
ゴージャスなベナレス・サリーの店も、こんな感じ。
夕方から人出はますます増える。
交通地獄。ヴァラナシで信号機なんて1台も見かけなかった。舗装の綻びたガタガタ道を、車もオートバイもリキシャも、大型バスもトゥクトゥク(「オートリキシャ」とは最近言わないらしい)も、みな我先に前に出ようと、センターラインも無視してチキンレース。こわーい。空気悪ーい。(サイクルリキシャ上でiPhone自撮り。)
Labyrinth.
迷路探検。
ヴァラナシって、用意していった地図がほとんど役に立たない。グーグルマップも見当違いの場所を指して使い物にならなかったが、5日もいれば、人間の勘と自分自身の記憶力をたよりに、迷路にも慣れて歩き回れるようになった。
何が飛び出してくるかわからない。
ベンガリー・トーラーというこのあたりは外国人バックパッカーが多い路地だから、トイレットペーパーが目立つ所に売っている。
「アンニョンハセヨ~」「今日は何見ます?ブラブラだけ?ダブダブズボンどう?ダブダブ。」「大沢たかお似てますね。大沢たかお来ましたよ。大沢たかおのわたし通訳。もしかしてほんとに大沢たかお?(『深夜特急』(1997)は見たけど全然似ておらず15歳も年寄りの夫「違うよ」)えー怪しいなあ。」怪しいのはあんただよ!・・・お兄さんたち、しつこければしつこいほど、笑わせてくれる。30年前と違って老獪な私たちには笑うゆとりがある。ヴァラナシに5日もいたから、同じお兄さんと同じトンチンカンなやりとりを繰り返して双方笑い出すこともあった。だが、世界の多くの国で同様なのだろうが、インド人は男が交渉権・決定権・財布の紐を握っているはずと考えるらしく、夫婦一緒に歩いていても女の私のことは完全無視、夫だけが集中砲火に晒される。(それと裏腹に写真左上のペンキ絵は、夫シヴァ神の死体を踏みつける荒ぶる女房神カーリー。)
"Maxxxxana? Haxxxsh?"
・・・なんて声も、当然かかるのさ。
ヴァラナシの猿は凶暴だというから、頭上にも気を付けた方がいい。
Alley to Kashi Vishwanath Temple (a.k.a. Golden Temple).
御神体は巨大なシヴァリンガだというカーシー・ヴィシュワナート寺院(黄金寺院)への路地は、小銃を携えた兵士がいるチェックポイントが何か所も設けられ、国際空港並みの厳重警戒中。その中をヒンドゥー教徒の善男善女が延々と長い行列をなしている。行列に沿って供物の花と参拝みやげを売る店や、持ち込み禁止の手荷物と履物を預かるロッカー屋(「拳銃・爆弾は預かりません」)が並んでいて、客引きの声がけたたましい。
カーシー・ヴィシュワナート寺院参拝者の行列で、狭い路地はいっぱいになってしまう。
Bangle shop.
カーシー・ヴィシュワナート寺院近くのこの店でチュリー(バングル)を買った。12本1組で12x4、計48本も買って120ルピー(約240円!)
International friendship at Sarnath.
インドの子供たちは撮られたがりだ。特にパブリックスクールに通っているような中産階級の少年少女は、外国人ツーリストに積極的に話しかけ、国際交流をはかろうとする。中でも一眼レフや長い望遠レンズ付きのプロっぽいカメラを持った「フォトグラファー」は、彼らの憧れの的らしい。プロっぽいカメラで撮ってもらうだけで嬉しくて、その後何を要求するでもない。だが男の子に比べてやっぱり女の子は少しはにかみ屋で、女のフォトグラファーの方が話しかけたりしやすいようだ。ダシャシュワメード・ロードからトゥクトゥクで飛ばして約30分のサールナート(釈迦初転法輪の地)にて。
Curry udon noodles, a blended taste of Japanese and Indian.
インドでカレーうどん。ドゥルガー寺院の帰りに立ち寄った i:ba Café にて。
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448 photos taken by Megumi in this tour available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/albums/72157660658333004
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