18 May, 2013

"Bill Cunningham New York"

iphone photo 406: Photographer on the film. May 2013
Poster outside the movie theatre in Tokyo, taken by Megumi Manzaki using iPhone camera.

I went and saw today an American 2010 documentary film Bill Cunningham New York - an eighty and more old-year fashion photographer working for The New York Times.

『ビル・カニンガム&ニューヨーク』という映画を見てきた。
日本公開の宣伝はどうも「ファッション」に偏っている感じだが、ニューヨークタイムズ紙の名物ファッション・カメラマン、ビル・カニンガム(1929-)を追ったドキュメンタリーだ。

80歳+のビルは、自分自身はチョー質素な服装で、雨の日も風の日も雪の日もマンハッタンの街路を自転車で駆け回り、街角でちょっとでも目立つファッションの人を見つけると追っかけていってシャッターを切る。彼の愛機はなんと今どき完全手動のニコンFM?FM2?レンズは85mmかな?フィルムはフジカラーのネガフィルム(ASA400)だ。現像は街のDPE任せだが、デジタル画像のウェブ紙面のレイアウトには、若い編集者のパソコン作業に付きっきりでうるさく口出しする、現役バリバリのファッション・ジャーナリストだ。ストリートだけでなく社交界のパーティーに、パリのファッションショーにと忙しく飛び回るが、招かれたパーティーでも決して飲食せず、彼に写真を撮ってもらいたい人々と歓談しながら、いつものニコンFMでひたすら写真を撮りまくるだけ。

ファッションにしか興味がない、どんな有名人でも身に着けているファッションが冴えなかったら撮る気はない――と言いながら、ビルの言動には一貫して、被写体の人々への優しさ、尊敬、女性への細やかな愛情などが示される。彼が撮った写真に被写体への悪意が感じられる写真は1枚もないと、誰もが証言する。写真家自身の言葉で声高に語られることはなくとも、それこそは重要な写真家哲学だ。

たとえばこんなエピソード。彼のキャリアの初期のころ、パリのコレクションで発表されたモードと全く同じ服を、ニューヨークのストリートで、必ずしもモデルと同じように若くも痩せてもいない女性たちが自分のものとして着こなしている姿を、ビルは好意をもって撮ったのだが、当時彼が専属だったファッション誌はそれを、パリのショーでのランウェイ上のモデル写真と並べ、ニューヨークの勇敢な一般女性をおとしめるようなキャプションを付けて掲載した。ビルはこのことに大変心を痛め、落ち込み、この出版社との関係を絶ち、その後も、自分が写真を撮ったせいで笑いものにされたかもしれない女性たちの心情を心配し続けていたという。

ビルがファッション記者となった1960年代、ある人物が「このカメラをペンのように使いたまえ」と言って、「36枚撮りフィルムで72枚撮れるカメラ」をくれた。それがビルのファースト・カメラとなったそうだ。オリンパス・ペンだ!(私と同じだ!)

最初に専属した出版社からの支払いは、受け取りを拒否し続けた。一銭でも金を受け取ると写真に口出しされる、それがいやだったからだという。最もヴァリュアブルなものは「自由」だと・・・。

フラワーチルドレンやヒッピーの時代、パークやヴィレッジに集まる若者たちの自由でカラフルなファッションに魅かれて夢中で撮った写真は、全部白黒だった。あのファッションはカラーで撮らなきゃ意味がないのに、と周囲は笑う。カラーはフィルムも現像代も高くついて無理だったんだ、とビルは言う・・・・・・。ちょうどその時代、11歳で最初のカメラ「オリンパス・ペン」を手にした私も、やはり白黒フィルムしか買ってもらえなかった。スクリーンのビルに大きくうなづきながら、とても懐かしくなった。