60歳過ぎてもライブハウス通いが止まらない、かっこいいインディー・ミュージシャンのライブ写真撮影に精出すおばさんロック・フォトグラファー。機材は1970~80年代のオールドレンズ、コンタックス/カール・ツァイス。時にはライカ。最近ニコンも使うけど、AFもAEも最新機能は信用せず、マニュアルモード一本やり。老眼かすみ目つらくても、今夜も腕っぷしでがんばるよ!
07 February, 2014
Dutch tour, Nov 2009 + Dec 2006 - オランダ旅行・珍道中
ロックのレコードを買いに、2009年11月下旬、3度めのオランダひとり旅。レコードフェア会場のあるユトレヒト、アムステルダム、そしてロッテルダムへも足を延ばしたが、天気は大荒れ、あまり写真が撮れなかった。
2006年に初めてオランダに行った時の可笑しな話を、末尾に付け足しました。
Visitor-eye snapshots in Utrecht, Rotterdam and Amsterdam late November 2009.
Using Nikon D60.
All photo copyright © 2009 Megumi Manzaki.
97 photos including private shots and also Dutch tour 2006 taken by Megumi available.
http://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157622873054008/
It was December 2006 when I visited Nederland and stayed one overnight in Amsterdam for the first time.
初めてオランダを訪れたのは2006年12月。レコードコレクター仲間のオランダ人の家に数日滞在させてもらった。5人家族で、友人夫婦も長身だが、長男は15歳にして190センチ超。オランダ人は平均身長が世界一高い国民だというが、ホテルではなく一般家庭に泊まってそれを実感した。まず、トイレの便座が高い。私が腰掛けると両足が床に着かない。洗面台も、鏡の位置が高すぎて自分の顔が映らない。その家の6歳のお嬢ちゃん用の踏み台を私もこっそり使おうかと思ったぐらいだ。「コーヒーはいつでも自由に入れて飲んで。」と言われても、台所の戸棚に手が届かない。
調理台の高さが私の胸あたりまである台所に立って、ある晩、家族の夕食を私が作った。じゃがいもの皮を包丁で剥き始めたら、「キャー危ない!皮剥き器があるんだから使いなさいよ。」と悲鳴をあげられた。家族全員が台所に集まってきて、私の手際に眼を丸くした。13歳の次男がデジカメを持ってきて撮り始めた。翌日学校で見せる気だろう。日本から来たチビの包丁パフォーマンスはウケた。
最後の一泊だけアムステルダムのホテルに泊まった。「オランダの伝統的建築物」という紹介文に惹かれて、街区の特徴をよくわからないまま日本から予約して行ったら、着いた所はアムステルダム駅と運河の船着場に近い下町の、いわゆる「red-light district=赤線地帯」に隣接した安宿だった。確かに古めかしい縦長の伝統的なオランダ建築。チェックイン時に「鍵のデポジットに20ユーロ置いていけ」と言われた。迷路のような狭くて急な階段とペンキの剥げた廊下を何重にも折れ曲がりながら、いったい何階だかわからない上層階までのぼりつめて部屋の鍵を開けた。床は軋み、外の見える窓がひとつもない、細長い冷えびえとした小部屋で、シャワーのお湯は出るけれど、シャワーを使うとトイレがびしょ濡れになる。背負ってきた荷物を置いて、薄いマットレスの上にごわごわの毛布が1枚の簡易ベッドに腰掛けた時、ヨーロッパのひとり旅は慣れていたはずだけど、心細かった。これでもし火事になったら逃げられない。階段の途中で煙に巻かれて、ここが私の死に場所となる・・・・・・。
どうやって迷わず階下に降りてきたかも憶えていない。気持ちを切り替えてアムステルダム観光した。運河を幾つか渡って「パラディソ」まで足をのばしてみた。老舗のレコード店「レコード・パレス」で「テイスト」の古いドイツ盤---ジャケットが湿っぽくてカビ臭いやつを買った。でも、暗くなると安宿の廊下と階段は怖いと思ったから、キオスクみたいな売店でサンドイッチとミネラルウォーターを買い、近所の「飾り窓」も観ずに、テレビもない小部屋に早々と閉じこもってしまった。
なんとその伝統的オランダ建築、2階から上が安宿で、1階は「コーヒーショップ」だった。あるいは壁を接した隣の伝統的建物の1階が「コーヒーショップ」だったのか。寒いから簡易ベッドぎわの給湯式ラジエーターにしがみついて寝ようとしていたら、なんだか甘ったるいような匂いが部屋にただよい始めた。ラジエーターの上の小窓が隣の建物とのわずかな隙間に面していて、もしかしたら階下の「コーヒーショップ」に立ちこめた煙が、壁の隙間を通風孔か煙突のようにして這い上がってくるのかもしれなかった。
その晩、私は浅い眠りの中で繰り返し、サイケデリックな極彩色の夢を見た。タダで吸えちゃったかも!と思ったら急に、アムステルダムの暗鬱な空と、あっけらかんとした猥雑さに親しみを覚えた。翌朝、人けのない飾り窓地帯と運河沿いの小道を手ぶらでぶらつきながら、旅の空気を満喫した。安宿のチェックアウト時、デポジットの20ユーロはちゃんと返してもらった。