インド最北部のラダック地方は、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に挟まれた、平均標高3500メートルといわれる乾燥した高地。1974年まで外国人の入境は許されていなかった。今でも特定の地域を訪れるには、インドの入国ヴィザとは別に、Inner Line Permit (ILP) という許可証を取得しなければならない。西はパキスタンと、東は中国と不安定な国境を接し、軍事施設も多いが、柔和なチベット仏教徒が暮らし、行く先々で旅人をもてなしてくれる。だが山道は険しく、冬は雪と氷で閉ざされて、事実上夏しか観光で訪れることなどできない。
インダス河の谷間に沿って、たくさんのゴンパ(チベット仏教の僧院)が、岩山の中腹にはり付くようにしてある。1950~70年代以降に中国共産党によって民族的弾圧を受けた中国領チベット自治区よりも、ここラダックではチベット仏教文化が色濃く、また寺院や僧院も破壊をまぬがれ古いまま残っているものが多い。
ラダックのチベット仏教芸術の詳細な記録は、かなり高価な古本となるが、井上隆雄(写真) 『チベット密教壁画』 (駸々堂出版・1978年) という大型の写真集がある。
Using Carl Zeiss/Contax Planar 50mm/F1.4 single focal lens, Planar 85mm/F1.4 single focal lens, Planar 100mm/F2 single focal lens, Distagon 25mm/F2.8 single focal lens, Sonnar 180mm/F2.8 single focal lens with Sony Alpha ILCE-7 35mm full-frame camera (partly Sony Alpha NEX-7 APS-C camera), and Leica X-2 APS-C compact camera.
All photo copyright © 2014 Megumi Manzaki.
05 Aug 2014 - the first day in Leh.
レー。到着したその日に、ナムギャル・ツェモと呼ばれる岩山にのぼった。
行ける所までタクシーで、最後の詰めは息を切らしながら徒歩で。
レーの街の標高は約3500メートル。空気が薄いことは覚悟していたが、
じりじりと照りつける直射日光が、岩肌に当たってこんなに暑いとは、想像していなかった。
まるでフライパンでから煎りされているようだ。
Photo © 2014 Eiichi Manzaki, using Leica M camera with Summilux M 35mm/F1.4
49 photos taken at Lehchen Palkhar and Namgyal Tsemo Gompa, Leh Ladakh available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646488617915/
06 Aug 2014 - Upper Ladakh.
83 photos taken in Upper Ladakh available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646434583466/
06 Aug 2014 - Cham dance, Tibetan Buddhist festival at Takthok Gompa.
タクトク・ゴンパ、年に1度の祭礼チャム。
2階バルコニーの「ローカル・オンリー」席。
チャムは2日間続く。仏法の敵を打ち砕くクライマックスは、まだまだ先。
Using Carl Zeiss/Contax Sonnar 180mm/F2.8 with Sony Alpha NEX-7 APS-C camera
99 photos taken in Takthok Ladakh available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646484389362/
07 Aug 2014 - Lower Ladakh.
Apricot orchard in Alchi.
岩山と荒地のラダックは、裸麦と、カブやダイコンなど少しの野菜しか育たないが、
インダス河下流の比較的標高が低いあたりはアンズの産地で、出荷作物だ。
ちょうど収穫の時期で、枝になっているのを数個、ドライバーがもいで食べさせてくれた。
66 photos taken in Lower Ladakh (1st day) available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646082516330/
08 Aug 2014 - Lower Ladakh.
チベット仏教は、大乗仏教と言ってよいかと思うのだが、「ラダックやチベットの人々があのように熱心に拝み求めるものは、現世利益なのだろうか?」と、帰国後しばらくしてから、私の疑問を夫に問いかけてみた。
断定をためらいながらも、夫の答えはこうだった。「我々はラダックにもチベットにも行ってみたから、あの風土の厳しさはわかったと思うけど、彼らの世界は、ちょっと前までは今よりさらに、人間の生存限界ギリギリの世界だった。現世は厳しすぎるから、来世はもっと良い所であってほしいと願うのは、輪廻転生を信じる人々の自然な信仰と言えるのではなかろうか?」
夫は中国領チベット自治区の最奥にある巡礼地、カン・リンポチェ(カイラス山)まで行っている。ラサからチャーターのオフロード車をひたすら飛ばして片道4日、そこからさらに標高4000~5000メートル超の山麓の巡礼路を徒歩3日。私も2007年冬、巡礼シーズンのラサを訪れた。その際、チベット自治区全体の平均寿命は47歳という話も聞いた。(Tibet 2007 - チベット もご覧ください。)
チベット人のガイドが私たちを案内しながら、参拝者に交じって仏像の前で額づき念仏を唱える姿を、そしてこの度のラダックの旅でも、普段は陽気なドライバーが訪れたゴンパの本尊やダライ・ラマの肖像を納めたチョルテンの前では神妙な面持ちとなり、地面に額をすりつけひれ伏す姿を、私たちは幾度となく眼にしてきた。
蓮の華咲く極楽浄土に、ではなく・・・、かといって、ここで、今すぐ豊かな生活を手に入れたいというのでもなく、いつか、どこか、次にまたこの世界に生まれてくることを思い、世界が善きものであることを願い、仏の前に身を投げ出して人々は祈るのだろうか。
74 photos in Lower Ladakh (2nd day) available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646501871365/
09/10 Aug 2014 - mountain highway to Pangong Tso, driving along the rough road.
パンゴン・ツォへの山道は、大半が未舗装、落石もある悪路続き。
高地仕様のトヨタ車のドライバーは、「オーン・マニ・パドメー・フーン」と六字真言を唱えながら、ひた走る。
Chang La pass, 5360 meter altitude.
I was happy without any high altitude sickness.
チャン・ラ、標高5360メートルの峠。車が通る道としての標高は世界で3番目とも4番目ともいわれるが、
ギネスブックで世界一に認定されたカルドゥン・ラ Khardung La (5602メートル)も、わりと近くだ。
ただしどちらも数字はインド軍の主張であって、本当はもうちょい低いらしいが、
5000メートル超であることは間違いない。ヤッホー!
酸素が平地の半分ぐらいしかないから、無駄に走り回れば息切れはするが、
私、高山病の症状は出ず、全然へっちゃらだった。
Taken by E.Manzaki
Sky high valley near Tangtse. Pashmina goats on the plain.
大規模な軍事施設とILPチェックポストがあるタンツェ付近は、こんな美しい谷。
遠くの草原に見える白っぽい点々は、パシュミナ山羊だそうだ。
Distant view of Aksai Chin, no trespass area (for foreign visitors) under Chinese administration.
あっちの方はアクサイチンと呼ばれる中国実効支配地域だそうで、
メラクという湖畔の集落までしか外国人は行かれない。
ドライバーはメラクまで行こうとしてくれたが、出水があり、ここまでが限界だった。
Chang La pass again.
チャン・ラ峠復路。
茶店で買える唯一のランチメニュー「マギー」(インスタント麺)は、クタクタに煮え過ぎてたが、
気圧が低く水の沸点が85度ぐらいだから、おそらく圧力鍋を使うのだろう。それだけでもありがたい。
86 photos taken on the highway and at Pangong Tso available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646450398282/
Leh town.
レーの街歩き
Using Leica X-2 compact camera
Coppersmith from Chilling, a village along Zanskar river,
descendant people of ancient Nepali goldsmiths.
ネパールの鍛冶職人の子孫と伝えられる、チリン村の銅細工師。
65 photos taken in Leh available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646085515558/
私たちはラダックでの宿泊や旅程のアレンジ、車のチャーターの手配を、ザンスカール人のTsewang Yangphelさん&日本人のSachiさんご夫婦がレー市内で経営する Hidden Himalaya という旅行会社にお願いしました。
I recommend HIDDEN HIMALAYA, a travel agent in Leh: http://zanskar.jimdo.com/
Jullay!
(meaning Hello, Thank you, Bye-bye, almost almighty Ladakhi greeting word.)
13 Aug 2014 - National Museum, New Delhi.
帰路ニューデリーに一泊滞在。あまり歩き回らず、カメラを持って訪れたのは国立博物館だけ。
私たちがレーを去った8月12日、入れ替わりにインド政府首相がラダック入り。
カルギルでの新首相の対パキスタン強硬策会見を一面トップで伝える、翌朝の英語全国紙。
(左端の写真は、急逝した米俳優ロビン・ウィリアムズ氏の哀悼記事。)
The other image of Buddha - ancient Gandhara.
ガンダーラ仏。やはりインダス河流域(今のパキスタン北東部)の出土だが、遥か昔。
Using Leica X-2 compact camera
コンパクトカメラでも、シャッター速度・絞り・ISO値のすべてをマニュアルで決められるカメラなら、ここまで撮れる。
83 photos taken in the National Museum, New Delhi available.
https://www.flickr.com/photos/megumi_manzaki/sets/72157646512047355/